家事の総本山的な存在であるキッチン。私はキッチンの成功無くして家造りの成功無しと考えます。家造りの成功には間取りの成功が必要で、間取りは家事動線を重視するべき。家事動線の中心はキッチンなのでキッチンの計画は非常に重要だということを声を大にして言いたいと思います。
我が家を訪れる人々も一番興味があるのはキッチンのようです。ショールームでシステムキッチンを見るのは楽しいですよね。新しい生活の夢が広がります。
我が家のキッチンにはかなり闘魂を注入しております。一言で表現すると、完全オーダーメイドです。所謂システムキッチンではありません。ワークトップから収納に至るまで、あらゆる寸法や配置を含めたデザインを自分達で決めました。何を考えてキッチンを計画したか、どのような選択肢があるのか、我が家のキッチンの仕様を交えてお話したいと思います。
キッチン計画で考えたこと
①家事動線
家事動線がスムーズになるようなキッチン。どのようにすればいいでしょうか。まずは仮想のキッチンの図面をノートに描いてみましょう。すでに図面があるならそれでいいです。
図面上で家事動線をイメージします。普段の生活でキッチンに関係する動きをイメージして、その動きがスムーズになるように図面を修正していくのががいいと思います。その際、動きをかなり細かく分解してください。また、可能性のある動きを全て洗い出してみてください。キッチンにある物もどんどん図面に書き込んでいきます。
買い物から帰ってきたら、どのように動いてキッチンに行きますか?買ってきた物はとりあえずどこに置いて、最終的にどこに仕舞いますか?冷蔵庫の扉はどちら側に開きますか?買い物袋はどこに置きますか?動きはスムーズですか?
料理する時、どこから何を取り出して、どこに置いて、どのような作業をしますか?
無駄な動きはありませんか?十分なスペースがありますか?長時間作業しても疲れませんか?レシピを確認したい時、他の部屋に行きますか?料理が完成したら、どこから食器を取り出して、どこに置いて、どのように盛り付けますか?
料理に使った道具はどこに置いて、いつどのように洗いますか?洗剤はどこに置きますか?洗った後はどうしますか?手が濡れたらどうしますか?布巾やタオルやエプロンはどこに仕舞ってありますか?
料理で出たゴミはどこに置いて、最終的にどこに捨てますか?勝手口から外のゴミ箱に捨てますか?下駄履は雨の日でも濡れませんか?
料理中にやる可能性がある他の家事はありますか?その場所までスムーズに移動できますか?移動した後、鍋が噴きこぼれても察知できますか?
家族と一緒に料理することはありますか?ワークトップで横に並んで作業できますか?背面の棚との距離は人がすれ違えるほど十分ですか?逆に遠すぎて不便ではないですか?
これは一例です。もっとたくさん考えてみてください。このような作業の分解をしつこくやって、なるべく無駄のない動線になるようにキッチンを計画しました。
②キッチンと他の部屋との関係
新聞広告のちらしでハウスメーカーの間取りを見ていると、LDK一体型のプランが多いように感じます。カウンターキッチンで料理をしながら家族と対話する構図をよく見かけますね。かつてはキッチンは他の部屋と独立しているプランが多かったと思います。
一体型と独立型、果たしてどちらが正解なのでしょうか?それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが正解ということはありません。人それぞれ正解は違います。自分に合ったプランを考えなければなりません。
我が家は半独立型のキッチンとしました。音と匂いの問題を懸念して、独立タイプを志向しましたが、完全に独立するのは嫌というわがままプランになっています。ワークトップの正面に小窓があり、小窓を閉めるとキッチンは独立し、開けるとリビングダイニングと少し繋がるようにしています。
小窓はミニカウンターになっていて、そこから料理の出し入れもできます。また、採光と視線カットを考えて小窓は半透明のポリカーボにしています。このミニカウンターはブラックウォルナットです。少し堅めの材なので、傷や汚れに強く、濃い色合いがアクセントになっています。写真の奥がキッチンです。
③体の大きさや作業のやり方に設備を合わせる
キッチンでの作業は、大部分をワークトップやカウンターの上ですることになります。これらの高さが身体に合ってないと、長時間の作業は苦痛になります。ところが、システムキッチンの場合、高さの選択ができないか、できても5cm単位で3択のような場合が多いです。たった数cmの差による不快感を人は察知してしまいます。よく言われるワークトップの高さの目安(身長÷2+5cmとか肘下○cmとか)は、あくまでも参考に留めておき、実物で感覚を確かめるべきです。我が家はワークトップ、背面カウンターとも高さ900mmとしました。
システムキッチンでワークトップの奥行を選択できるケースは少ないと思います。あまり奥行きがあっても手が届かなくてはストレスになると思いますが、奥行きがあと少しあれば使い勝手がいいのにと思っても自由に寸法を変えることは難しいです。我が家はワークトップ、背面カウンターとも奥行き700mmとしました。
また、効率的に収納するために吊戸棚を設ける場合が多いと思います。こちらも高さが合わないと取り出しにくかったり、内部を確認できなかったりします。また、奥行きがありすぎると奥の物が取り辛く、不便になる可能性が高いです。我が家の吊戸棚の奥行きは350mmとしました。
システムキッチンでは収納もセットになっていますね。ご丁寧に下まで降りてくる収納まで存在します。少なくとも日常的によく使うものは、目が届き、スムーズに出し入れできる場所に仕舞えるように計画したいものです。
細かい所では、水栓の位置は作業のやり方を考慮して決めています。例えば、お米を研ぐ作業。我が家では最終的に浄水器の水を入れます。ワークトップに炊飯釜を置いたままで浄水器から給水できたら便利です。鍋に水を入れる場合もしかり。そこで、浄水器の水栓はシンクの端に設置して、ワークトップ側でもシンク側でも使えるようにしています。
通常の水栓もシンクのど真ん中にある必要はありません。シンク内を広く使えるように少し端の方に寄せています。蛇口が伸びてホースのようになる水栓を採用したのでシンクの掃除も楽々です。こちらはワークトップを上から見た図面です。
④物の大きさに設備を合わせる
シンクや収納の大きさを、持っている物の大きさに合わせると、作業効率が上がりスペースも有効に使えます。調べた結果、我が家で一番大きな洗い物はホットプレートの鉄板でした。これがすっぽり入って洗えるようにシンクの大きさを決めました。また、シンク内に置く洗剤やたわしも大きさを考えて専用の置き場を確保しました。
比較的大きな調理家電や鍋釜類の収納は、寸法を測って適切な収納サイズにしました。こちらはワークトップの正面図。シンク右側(グラス類)やIHコンロ左側(調味料)のちょっとしたスペースも抽斗にしています。IH下に2段(鍋釜)、その右側に3段(調理器具、調味料)の抽斗、シンクの下も2段(雑貨、調理器具)の抽斗、その右側はOPENで雑貨や浄水器のカートリッジを収納しています。吊戸棚は最下点の高さを低くし、右2枚(グラス類)、左1枚(乾物や雑貨)としています。
⑤収納量と収納方法
キッチン内で収納するものは、調理器具、調味料、食器、食品、雑貨など多岐に渡ります。所定の位置を決めておき、適切なスペースを確保しておけば、慌ただしい日々の中でもそれなりに片付いたキッチンをキープできると思います。しかし、ピッタリ収納できても使う時に取り出し難ければ作業効率は落ちてしまいます。何かを退かせないと取り出せない収納はあまりよろしくありません。
そこで我が家では、普段使いの物は全て抽斗に仕舞うようにしました。なるべく重ねずに収納できるように浅めにしています。お皿は平置きせずに縦置きで重ねるようにしています。抽斗の寸法は、持ち物検査をしてどこにどれだけ仕舞うかを決めてから適切な値にしています。また、全ての抽斗はサイレントクローズ仕様です。バーンと勢いよく閉めても、自動でゆっくり閉まってくれます。そのような抽斗金具があります。こちらはワークトップの背面側の図面。カウンター下は全面収納です。OPENとなっている場所に電子レンジが鎮座しています。電子レンジの右側は熱風が抜けるように開口を設けています。電子レンジの下が調理家電用の抽斗です。
ちなみに右側の勝手口の土間は室内側にあり、下駄履は室内で脱ぎます。勝手口を出たところに外ゴミ箱や水栓があります。
⑥採光や通風
可能であれば窓を設けて明るく風通しの良いキッチンにしたいですね。ただ、日光が入り過ぎるのは避けた方が無難です。窓の方角によっては眩しすぎる、暑い、食品が傷むなどの問題を引き起こすかもしれません。
風を通したい場合は窓の対面にも窓が無ければなりません。奥まったキッチンに1か所だけ窓を設けても通風はあまり期待できないでしょう。我が家のキッチンは北東の角にあり、東面と北面に窓を、北面に勝手口を設けています。
窓の対面である西側と南側にも(別の部屋ですが)窓を設けているので、全て開放すると風が抜けます。東面の窓は夏場の日差しが朝でもきついです。その場合はブラインドで調整しています。北面の窓は安定した光が入ります。そして、北面は隣地の駐車場、東面は道路(ほぼ歩行者専用)なのですが、窓ガラスは透明にしています。視線を遮りたい場合はブラインドで調整します。こちらは東面の図面。ワークトップとカウンターの間は1,100mm程度あります。
⑦材質
ワークトップはステンレスで製作しました。ワークトップの正面と側面の壁はキッチンパネルなのですが、メモやキッチンペーパーなどを取り付けられるように磁石が付く素材にしています。その他の壁は漆喰です。背面カウンターや抽斗、吊り棚、ワークトップの土台は、檜の集成材(板厚方向は一枚板)、床は無垢の檜です。
ここで考えなければならないのは、防汚、傷、耐水性、耐熱性だと思います。ワークトップ周りは油汚れが付着することを避けられないので、汚れが付きにくい素材(キッチンパネルや金属)がお奨めです。タイルの雰囲気が良いのは分かりますが、綺麗に保つのに手がかかると思います。タイルにする場合は目地の色を汚れが目立たないものにするとまだマシだと思います。あくまでの汚れが目立たないだけで汚れるのは避けられないですよ。
ワークトップ自体は、ステンレスの他に人工大理石も選択肢に入ります。我が家の場合は、ワークトップに熱々の鍋を直接置きたい、気を使いたくないという理由でステンレス一択でした。
水回りに無垢材はどうなのかと思っていました。汚れた手で抽斗を開けたり、水が飛び散ったりでそれなりに汚れます。しかし、汚れは落とせますので問題なかったという結論です。汚れの落とし方はまた別の機会にお話ししたいと思います。
⑧電源
どこで何を使うかを考える際、電源が必要かどうかも考えてください。適切な場所に電源が無ければ不便ですよね。
我が家の場合、ワークトップ上にはフードプロセッサーや電気ポット向けの電源を用意しました。また、IHコンロや食洗機用には専用電源(ブレーカーを分ける)を用意しました。消費電力が大きい物は専用電源にしておかなければ、ブレーカー落ちが頻発してしまいます。
ちなみにオール電化ではないのにIHコンロを選択しています。火を使うと夏場に暑いから、だそうです汗。ちなみにIHコンロがあるのにガスコンロも使えるようにもしています。土鍋で料理したい時もあるから、だそうです大汗。
ガスコンセントを用意し、そこからガスホースを伸ばしてIHコンロ上にガスコンロを置いて使います。一口タイプの簡易ガスコンロですが、あるとないとでは大違いです。ちなみにガスコンセントからガスヒーターを使うこともできます。その際、電源も必要になるので、ガスコンセントの隣に電源も用意しています。
背面のカウンター側にも電源を配置しています。カウンター上には炊飯器や精米機、ホームベーカリー、トースター用電源、カウンター下には電子レンジ用専用電源という感じです。これらは使わない時は抽斗に仕舞い、使う時はカウンター上に出します。キッチン内の壁にも電源を用意しています。冷蔵庫用、掃除機用などです。
我が家のキッチン
キッチンの計画においては、身体に合った大きさ(特に高さ)、十分な作業スペース、あまり動かなくても必要なものに手が届く、作業の流れに沿った収納、所有している物に合った収納などがキーワードになってくると思います。色々考えた結果がこのようになりました。
ワークトップの向こうに見える四角い物体は換気扇です。壁に埋め込まれています。そのため、IHコンロの上には何もなく、スッキリしています。
我が家のキッチンができるまで
キッチンをどのようにして造ったか説明しておきます。ワークトップやカウンター、吊戸棚の枠や土台は大工仕事です。
ワークトップはあらゆる寸法を指定して特注しました。抽斗や吊戸棚の扉は建具屋にお願いしました。設備関係は購入して、水道屋や電気屋、時には設計士が取り付けました。色々な方の合作です。
導入した設備。食洗機はミーレ(Miele)が超絶お奨め。
水栓
TOTO TKN34PBTN 46,700円(税抜)
浄水器
メイスイ M-85FA4C 45,500円(税抜)
年に1回カートリッジを交換しています。カートリッジは16740円(税込)です。水量が多く使い勝手がいいと思います。
換気扇
壁に埋め込まれている換気扇。室内はスッキリで換気もスムーズです。ただ、一点問題があります。換気扇のファンは壁の外側にあるのですが、そこから地面に油が垂れます。油を受ける機構が無いのです。協立エアテックに連絡したのですが、対策は特に無いと。。。明らかに設計ミスな気が。。。我が家は受け皿をDIYで作りました。
協立エアテック スリムハイキII KVW-WA 109,620円(税込)
食洗機
ミーレの食洗機は、幅600 × 奥行き580 × 高さ810 ~ 870mmとかなり大型なため、鍋から食器まで何でも入って一撃で洗えます。我が家を訪問する人が必ずイイねを付けてくれます。このおかげで、我が家から「食器を誰が洗うか」という不毛な争いが無くなりました笑。
Miele G5500SCi ステンレス 357,000円(+設置料15,750)(税込)
詳しくはこちらをご覧ください。
IHコンロ
これはあまりこだわりがありませんでしたが、将来交換できるように普通の大きさを選択しました。3連コンロとかありますが、交換する際どうするのでしょうね?
MITSUBISHI CST32HS 117,600円(税込)
コストまとめ
最後にキッチン関係のコストをまとめます。総額130万円。これを高いと感じるか安いと感じるか分かりませんが、使い勝手の良いキッチンに仕上がりました。
なお、キッチンに関わる大工手間と土台の材木の費用を単独で算出できなかったので除外しています(合わせて20万円程度だと思います)。
項目 | 税抜 | 税込 |
---|---|---|
ワークトップ | 273,000 | 286,650 |
抽斗(18個)・吊戸棚扉(10枚) | 316,000 | 331,800 |
水栓 | 46,700 | 49,035 |
浄水器 | 45,500 | 47,775 |
換気扇 | 104,400 | 109,620 |
食洗機 | 355,000 | 372,750 |
IHコンロ | 112,000 | 117,600 |
キッチンパネル | 22,940 | 24,087 |
計 | 1,275,540 | 1,339,317 |
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